織る という行為に並々ならぬ敬意をもっています。
手織りであっても機械織りであっても、一本の糸から織物はできていて、そこには文化や祈り想い願いが込められているように感じます。
だから、布に刃を入れるとき、いつも少し心がキュッとなるのです。
「想いを裁つ」
そんな言葉がふと浮かんでしまいます。
染織工房や染色家、テキスタイルデザイナーさんから生地を委ねられた時はさらに心がギュッとなります。
緊張とプレッシャーというやつです。手に汗、冷や汗。

さてさて…
数ヶ月前に、ある生地の相談を受けました。
ご依頼主は知り合いのご夫婦。
奥様の誕生日プレゼントとしてこの生地でワンピースを仕立てて欲しいと。
何処か懐かしい雰囲気の、可愛らしさと上品さを持った絹織物でした。
お話を聞くと、奥様のお祖父様が、娘であるお母様にワンピースを仕立てる為に購入された生地だとか。お母様は仕立てることなくずっと箪笥の中にしまわれていたそうです。
それを奥様が譲り受けいつかワンピースに仕立てようと大切に保管されていたのです。
「この生地でワンピースを作ったら会ったことのないお祖父さんに会える気がするんです。」
とお話ししてくださいました。
素敵な依頼に感激しつつ、いつもと違ったプレッシャーを強く感じ、生地を持って帰りました。
※ワンピースのデザインもお任せで…というかなり難易度高めのご依頼でした。

つづく。