お会いしたのは四五回。
ここ数日のわたしを見てだろう、一冊の本を開いて渡してくれた。 『ここだけでも読んで。』 と。 この行為は、何かに繋がっている行為。 と、用心深く言葉を読み進める。 十行も読まないうちに来客。 ぱたりと本を閉じる。 その日は読み終えずそのまま帰宅。 帰りながら読んだ数行から渡された意図を読む。 なんとなく、ぼんやりと、言いたいことが思い浮かぶ。 翌日、風の強い日。 お客さまのいらっしゃらない貴重な時間が少し長い日。 あえて本の続きを読まず、昨日読んだ数行をもとに伝えたかったであろうことや、その数行から受け取ったことを打ち明ける。 探るような笑顔で頷く。 思い出して文字にできないけれど、全て記憶した。 そのまま行け、研ぎ澄ませ。
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